一度きりの人生、あなたは今何をしていますか?
一休禅師という名前は、多くの人に知られています。
彼は知恵とユーモアに富んだ「とんち」で有名で、アニメの「一休さん」で広く親しまれて
います。しかし、本当の一休禅師の言葉には深い教訓が込められています。
「世の中は食って、稼いで寝て起きて さてその後は死ぬばかりぞ」
一休禅師が詠んだこの歌は、彼の心根、奥底に秘めていた本心を表しているのではないかと
考えます。これは、彼が人生に対してどれほど穏やかで、心の平安を持っていたかを示して
います。一休禅師は死を恐れず、むしろ楽しみとして受け入れていました。
その一方、一休禅師は臨終に際して「死にとうない」と述べた逸話もあります。普通の人は
これを聞いて「一休さんも死ぬのが怖かったのか?」と思うかもしれません。しかし、彼の
一生や死生観を考えると、彼は自分が死んだ後に天国に行く確信があったことが分かります。
天国は彼にとって、無限の幸福と喜びがある場所です。そこに行きつければ、もう、二度と
戻ってこないことを知っていました。彼はこの世の苦しみから解放されることを悟り、高い
位置から「この世」を眺めて、「死にとうない」と言ったのだと、私は考えています。
仏教では、輪廻転生を断ち切り、天国に行くことが最終目標です。哲学を学んだりするもの
ではなく、目的は一つで、輪廻転生を断ち切り天国に行くことだけです。一休禅師はこの目
標を確信しており、死生観に達観していました。一般の人から見れば斜に構えて見えるかも
しれませんが、彼は宇宙の本質を正確に捉えていたのだと思います。
何百年、何千年と輪廻転生を繰り返した結果として、私たちはこの時代に生きています。生
まれ変わり死に変わり輪廻転生を繰り返している私たちが、輪廻の輪を断ち切り、宇宙の真
理を理解し、二度と生まれ変わらずに苦しみのない世界に行ける確信を得たとき、一度きり
の人生、私はこれから何をするのだろうか?コレが本当に最後の肉体で、ほんの数十年で終
わるとしたら自分はどのように人生を過ごすだろう。一休さんの言葉に思いを巡らせていた
ら、別の言葉も浮かんできました。
「馬鹿も利口も命は一つ」
これは五木寛之の『青春の門』に載っていた言葉です。なんとなく一休さんの歌に近い意味
を感じました。