サブロー通信は、アースアイズ代表 山内三郎が配信するメルマガです。
本ページでは、2019年4月〜現在までのサブロー通信をご覧いただけます。

2026.09.16

成し遂げるまで、やり抜く。―設立11周年に寄せて―

南アフリカの元大統領、ネルソン・マンデラは、かつてこんな言葉を遺しました。


「何事も成し遂げるまでは、
不可能に見えるものである。」

It always seems impossible until it’s done.

27年もの気の遠くなるような投獄生活を耐え抜き、アパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃に大きな役割を果たした彼の言葉には、言葉にし尽くせぬ重い実感が宿っています。

私はこの言葉を反芻するたび、物事に向き合う「姿勢の差」について深く考えさせられます。

そこには、真に事を成そうと泥水をすする「当事者」と、安全な場所からその行方を見つめる「傍観者」との間にある、決定的な分水嶺が示されているように思えるのです。

世の中には、すぐに分かりやすい結果を求めたくなることがあります。

また、「前例がない」「本当にできるのか」と考え、確かな結果が目の前に現れるまで一歩を踏み出せないこともあるでしょう。

まだ形になっていない挑戦は、ときに「無謀」に見え、「不可能」に映るものです。そこに「正解」と呼べるものが存在しないからこそ、それは当然のことなのかもしれません。

しかし、新たな価値を生み出し、社会の困難な課題を打破するのは、いつの時代も「まだ誰も見たことのない景色」を信じて、泥臭く歩みを進めた当事者たちです。


成し遂げるまでの道中は、常に先が見えない暗闇の中にあります。


試行錯誤を重ね、失敗に直面し、周囲から疑念の目を向けられることもある。


それでも「これは必ず世のため人のためになる」という信念と誠意を胸に、一歩一歩の足元を照らしながら前進し続ける。


その積み重ねの果てに、ようやく「可能」という結果が立ち現れます。


11th ANNIVERSARY

設立から11年を迎えて

思えば、アースアイズを立ち上げてから丸11年が経ちました。

この11年間を振り返るとき、私自身、胸を締めつけられるような悔恨と反省を覚えることがあります。


「もっと良い結果を出すことができたのではないか」

「いったい自分は何をやってきたのか」――

自らの力足らず、不甲斐なさを前に、どうしようもない反省の念に苛まれる夜が数えきれないほどあります。

外から見れば、11年を経てもなお、私たちが目指してきたものを十分に形にできていない現状は、あるいは「不可能なことに固執している」ように映っているのかもしれません。

まだ十分な結果を示せていない以上、いかなる弁明も通用しない厳しさを身に染みて感じています。


だからこそ私は、自問自答するのです。

AIやセンシング技術の社会実装も、誰も挑んだことのない新しい防犯・見守りの仕組みづくりも、すべては暗闇の中に道を拓いていくような歩みです。

この11年間の歩みを誤魔化すことなく真正面から受け止め、省みるべきことは省みた上で、なお「社会に必要だからこそ、成し遂げる」という覚悟を捨ててはならないと強く思います。


成し遂げるまでは、すべてが不可能に見える。

ならば、成し遂げるまでやり抜くしかありません。


先が見えにくい時代だからこそ、私たちは決して自らを傍観者の位置に置くことなく、この暗闇の先にある光を信じ抜き、泥臭く一歩を踏み出してまいります。

2026.09.10

心の棘を取りましょう

皆さま、ご無沙汰しております。

約2か月ぶりの「サブロー通信」です。

この間にも世の中ではさまざまな変化があり、AIをはじめとする技術の進化の速さを、改めて感じました。

近年、AIやセンシング技術はめざましい進化を遂げています。

カメラが人の動きや予兆を捉え、ミリ波レーダーが非接触で生体情報を検知し、高度なアルゴリズムが空間の安全を支える――。

かつては想像の域を出なかった機能が、現場で活用される仕組みとして社会に実装されつつあります。

しかし、技術が人の「眼」となり、知覚の領域を広げれば広げるほど、私たちが決して見失ってはならないものがあると、私は考えています。


それは、その技術を何のために、
どのような志をもって使うのかという
「人の心」です。

江戸後期の儒学者・佐藤一斎は『言志録』において、


「凡そ事を作すには、
須らく天に事ふるの心あるを要すべし」

と説いています。

私はこの言葉を、人の思惑や目先の利害、虚栄にとらわれるのではなく、自らに与えられた役割に向き合い、世のため人のために誠を尽くすことの大切さを説いたものと受け止めています。

技術そのものには、それを何のために使うのかという意思はありません。「技術の眼」に命を吹き込み、それを真に社会を支える力へとつなげていくのは、私たちの側にある「誠意」と「公(おおやけ)に尽くす志」ではないでしょうか。

単なる効率化や監視のための道具ではなく、人の尊厳を守り、暮らしの不安を安心へと変えるための眼であること。目に見える成果や数字を追う前に、まず「天に事ふる心」をもって現場の課題と真摯に向き合うこと――。私は、そこに私たちの仕事の原点があるように思います。

人は、心に不安や恐れ、わだかまりという「棘(とげ)」を抱えていると、なかなか前向きな一歩を踏み出せないことがあります。

昔から「心技体」と言われますが、私は、心が整ってこそ、技術や身体も十分に活かされるのではないかと考えています。心に余裕があってこそ、日々の仕事に真摯に向き合い、未来に向けて新たな一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか。

物質的な豊かさや技術が大きく進歩した今、これからはますます「心の豊かさ」が大切になる時代ではないかと、私は感じています。


人が心を豊かに保ち、自らの可能性を存分に発揮するためには、まず日々の暮らしにおいて、身体や財産が脅かされない「安心・安全の環境」が欠かせません。


私たちが磨き続ける防犯やセンシングの技術は、まさに人が心豊かに生きるための「揺るぎない土台」を支えるものだと考えております。


技術革新の波が加速する今だからこそ、私たちは足元を固め、この原点を胸に刻んで歩みを進めてまいります。

2026.07.07

24時間365日、 あなたに代わって見守るAIの力

AIは、どこまで「現場の安全」を支えられるのか

ChatGPTに代表される生成AIの進化が注目を集めるなか、防犯・防災の現場でも、AIをどのように活用できるのかという関心が高まっています。

皆さまは、「AIによる防犯アシスト」と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。

AIがカメラ映像を見続け、人に代わって異常を見つけてくれる。そんな未来を思い描く方も多いかもしれません。

一方で、防犯や防災の要となる画像解析AIは、実際の現場で24時間365日、安定して稼働し続ける必要があります。

天候、時間帯、照明、人物の動き、周辺環境。現場には常にさまざまな変化があり、AIにとっても決して簡単な環境ではありません。

だからこそ、AIを単なる「監視装置」ではなく、
人の負担を減らし、現場の安全を支える
「アシスト役」として活用することが重要です。

今回は、私たちが取り組んでいる画像解析AIの具体的な活用事例として、太陽光発電施設における防犯対策をご紹介します。

人の目に頼らない、24時間365日の見守り

これまで防犯カメラは、事件や事故が起きた後に映像を確認するための「記録」として使われることが一般的でした。

あるいは、人がモニターを見ながら、異常がないかを確認するためのものでもありました。

しかし、人が24時間365日、画面に張り付き、高い集中力を維持しながら監視を続けることは、現実的には困難です。人員面でも、コスト面でも、大きな負担がかかります。

夜間や休日を含め、常に目を配り続けなければならない。

広い敷地を、人の巡回だけで守り続ける必要がある。

こうした「見続けること」そのものの負担を軽減するために、AIによる映像解析が役立ちます。

AIは、休むことなく映像を確認し続け、侵入や確認が必要な動きなど、通常とは異なる変化を捉えるための補助を行います。

すべてを人の目だけで追い続けるのではなく、AIが確認のきっかけをつくり、人が必要な場面に集中する。これが、私たちが考える「AIによる防犯アシスト」です。

太陽光発電施設を守る、AIガードマン® for Solar System

この仕組みを具体化した事例の一つが、先日発表したENEOSリニューアブル・エナジー様の太陽光発電施設への導入プロジェクトです。

近年、全国の太陽光発電施設では、金属ケーブルの盗難被害が相次いでいます。広大で無人になりやすい施設では、異常の早期把握と迅速な対応が、安定運用のための重要な課題となっています。

こうした施設向けに提供しているのが、AIによる映像解析を活用した金属ケーブル盗難対策サービス、「AIガードマン® for Solar System」です。

PTZカメラによる「自動巡視」と、
AIによる二段階の確認を組み合わせ、
広い敷地を効率的に見守ります。

1台のPTZカメラで、広範囲を効率的に見守る

1台のPTZカメラで半径約500mを目安にカバーし、設定した巡視ルートに沿って自動で周辺を確認します。広大な敷地でも、必要なカメラ台数を抑えながら、日常的な監視業務の効率化を支援します。

ズームを活用した、二段階の確認

遠方で侵入や確認が必要な動きを捉えた場合は、対象付近を自動でズームし、より詳細な映像をAIが再解析します。広域監視時の映像だけでは確認しにくい対象についても、ズーム後の映像を用いて確認したうえで、通知の要否をAIが判断します。

誤検知や見落としの低減に配慮

風で揺れる草木や動物など、屋外監視で起こりやすい誤検知に配慮しながら、確認が必要な場面を捉えやすくします。AIによる映像解析とカメラ制御を組み合わせることで、効率的で安定した監視運用を支援します。

再生可能エネルギーを支える、見守りの技術へ

再生可能エネルギーは、日本の未来を支える大切なインフラです。その安定運用を盗難リスクから守ることは、私たちのAI映像解析技術が果たすべき重要な役割の一つだと考えています。

人がすべてを見続けなくても、必要な場面を把握し、適切に対応できる環境をつくる。

現場の負担をできるだけ抑えながら、施設を利用する方々や地域の皆さまに、より大きな安心を届ける。

AIが見守りを支え、
人が本当に必要な判断と対応に集中できる。
それが、私たちが目指す安全のあり方です。

アースアイズはこれからも、社会の安全パートナーとして、現場で役立つ技術を磨き続けてまいります。

今後もこの「AI解説シリーズ」を通じて、皆さまのビジネスや暮らしに役立つAIの最前線をお届けしていきます。どうぞご期待ください。

2026.05.26

AIの「目」と人間の「直感」〜監視ではなく、五感を拡張する技術〜

前回のおさらい

前回のサブロー通信では、AIは人間の仕事を奪うものではなく、私たちの可能性を広げる「道具」であり、人間を映し出す「鏡」のような存在ではないか、というお話をさせていただきました。

AIがあるからこそ、人間は「もっと人間らしい仕事」に集中できるようになる。

そんな考えについても触れました。

今回は、その考えをもう少し具体的に、私たちが取り組んでいる画像解析技術、いわば「AIの目」という視点からお話ししたいと思います。

「AIカメラで防犯や業務効率化を行う」と聞くと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか。

「24時間いつでも監視されている」

「サボっていないか見張られている」

もしかしたら、こうした息苦しさや冷徹な効率主義を連想される方も少なくないかもしれません。

しかし、私が目指している世界は、決してそんな「監視社会」ではありません。

私たちが開発しているのは、
人間を縛るための技術ではなく、
人間の「五感を拡張する」ための技術です。

24時間365日、疲れない「目」

人間の目には限界があります。どんなに優秀なスタッフが揃う店舗であっても、営業中の売り場を24時間、1秒の隙もなく見つめ続けることは不可能です。

接客もしなければなりませんし、品出しも、レジ打ちもあります。

一方で、AIの「目」は疲れることを知りません。混雑する夕方の時間帯も、スタッフの手が薄くなる死角のエリアも、24時間365日、常に均一な集中力で空間の変化を捉え続けることができます。

不審な動き。

声をかけるべきお客様の予兆。

そうした「日常のなかの、小さな違和感」を逃さずにキャッチする守りの能力において、AIは非常に頼もしい味方になります。

しかし、ここからが重要なのです。

AIが違和感を検知したとき、その本質を見抜き、「今、ここでどう動くべきか」を最終的に判断するのは、他でもない現場の「人間」です。

最後の1ピースを埋める、人間の「直感」と「お声がけ」

AIは「いつもと違う動き」というデータは教えてくれますが、「相手がどういう感情でそこにいるのか」という、心の機微までを100%理解することはできません。

店舗のスタッフが長年の経験で培ってきた「なんとなく不自然だな」「あのお客様、何か探していらっしゃるのかな」という直感。

あるいは、「何かお探しですか?」と優しく声をかける臨機応変な知恵。

これらは、AIには決して真似のできない、人間だけが持つ高次の能力です。

AIに「守り」を任せることで、
人間は「判断」と「温かみのある対応」に集中できる。

つまり、AIに「見張り」という負担の大きいルーティンワーク、いわば守りの役割を任せることで、人間は「状況を判断し、温かみのある接客対応をする」という、よりクリエイティブで本質的な業務、いわば攻めの役割に集中できるようになります。

AIの「目」が人間の五感を拡張し、人間が本来のパフォーマンスを発揮する。
これこそが、私たちが理想とする「人とAIの共生」の形です。

リスクを抑えて、まずは現場で試していただくために

テクノロジーは、人を突き放すものではなく、現場の可能性を広げるためにあります。だからこそ、私たちは口先だけでなく、ビジネスモデルそのものでもその覚悟を示したいと考えています。

現在、私たちは小売業の皆様に向けて、「AIガードマン® the server 成功報酬型プラン」をご提案しています。

「本当に効果があるのか分からないものに、最初から大きな投資はできない」

こうした経営者様の不安は当然です。だからこそ、まずは実際の売場で一定期間運用いただき、ロス削減効果を確認したうえで、費用をご判断いただける仕組みとしています。

AIは、導入して終わりの完成品ではありません。現場の声や運用結果をもとに、検知条件や活用方法を調整しながら、その店舗に合った使い方へと近づけていく技術です。

最初はAIも、見当違いなところでアラートを鳴らすかもしれません。しかし、「ここは気にしなくていいんだよ」と現場の皆さんが教えていくことで、AIの「目」は、より実用的なものへと磨かれていきます。

「監視」の先にあるのは、
人を縛る社会ではありません。
AIが人間の五感を補い、
人間がより人間らしく判断し、行動できる現場です。

安心と、人間らしさが生きる店づくりへ。

この機会に、ぜひ私たちと一緒に新しい一歩を踏み出してみませんか。皆様からのご相談を、心よりお待ちしております。

2026.05.19

AIと生きる、未来を創る/AIは「鏡」である ~心に火を灯すテクノロジー~

新連載「AIと生きる、未来を創る」が始まります。

今回のサブロー通信から、AI画像解析や、AIがこれからの社会にどのように関わっていくのかについて、私の視点から、できるだけわかりやすくお届けしてまいります。ぜひ最後までご覧ください。

新連載の第1回では、「なぜ今、私がAIを語るのか」についてお話しします。

世間では、AIに対して

「人間の仕事を奪うのではないか」

「どこか冷たくて怖いものではないか」

といった印象を持たれることも少なくありません。

しかし、私は少し違う視点を持っています。

AIは人間を映し出す「鏡」であり、
私たちの可能性を広げる「道具」でもある。

私はそう考えています。

AIは、私たちの可能性を広げる「道具」

AI(人工知能)は、人間を脅かす敵ではありません。
私たちがより良く生きるため、より安全な社会を作るための「道具」です。

車があるから、遠くへ行ける。

電卓があるから、複雑な計算が瞬時にできる。

そしてAIがあるから、人間は「もっと人間らしい仕事」に集中できるようになります。

鏡の向こうに見える、人間の温かさ

AIにたくさんのデータ、いわば経験を学習させていくと、面白いことに、私たち人間の行動が、いかに深い経験や直感に支えられているかが見えてきます。

AIという鏡を見つめることで、私たちは自分たちの強みや、お互いを思いやる心の尊さに気づかされるのです。

テクノロジーの進化は、決して社会を冷たくするものではありません。
むしろ、人間の心に火を灯し、可能性を広げてくれる温かいものだと私は信じています。

AIが私たちの社会をどう豊かにしていくのか。
そのワクワクする未来を、皆さんと一緒に覗いていければ幸いです。

この連載を通じて、AIが私たちの社会をどう豊かにしていくのか、その未来についてお伝えしてまいります。

次回予告

次回は引き続き、「AIとは何か」をテーマに、世にあふれる「AI」という言葉を、できるだけわかりやすく紐解いていきます。どうぞお楽しみに。

2026.05.12

AIは「完成品」ではなく「共に育つパートナー」である

現在、ChatGPTに代表される生成AIの進化は目覚ましく、
ビジネスのあり方にも大きな変化をもたらし始めています。

一方で、実際にAIを業務に取り入れようとすると、

「本当に正しく使えるのか」

「間違えたときにどう対応すればよいのか」

といった不安を感じる場面もあります。
私自身も、AIの可能性を感じる一方で、その不確実さとどう向き合うかは、
とても重要なテーマだと考えています。

ご承知の通り、AIは時に「堂々と間違える」ことがあります。
専門用語では「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれますが、もっともらしい回答であっても、
必ずしも正しいとは限りません。

だからこそ、AIを導入するうえでは、「間違えないもの」として過信するのではなく、
間違いを確認し、修正し、使いながら育てていく姿勢
が大切だと考えています。

画像解析AIにも共通する考え方

これは、生成AIに限った話ではありません。
当社が取り組んでいる画像解析AIも同じです。

最初からすべてを完璧に検知できるわけではありません。
現場の環境や使い方に応じて、誤検知や未検知と向き合いながら、
少しずつ精度を高めていく必要があります。

そのため当社では、AIの特性を正しく理解し、
実際のビジネスに役立てていただくための取り組みを進めています。

たとえば、以下のような機会をご用意しています。

AI導入支援キャンペーンやAIソリューション展示会は、AIの動きや活用イメージを、実際に見て、試していただくための機会です。

また、メディアでご紹介いただく機会を通じて、当社の考え方や取り組みについても、
少しでも身近に感じていただければと思っています。

今後も当社では、「導入して終わり」ではなく、
お客様の課題解決や成果につながるAI活用のあり方について、
より一層検討を進めてまいります。

AIと正しく向き合うために

AIは、使えばすぐに完璧な答えを出してくれる魔法の道具ではありません。

しかし、正しく向き合い、現場の知見を重ねていくことで、
少しずつ頼れる存在に育っていくものだと考えています。

まずは知ること、見てみること、そして実際に活用してみること。

お客様とともにAIの可能性を確かめながら、
新しい活用の形を作っていきたいと考えています。

2026.04.21

追悼:東海林さだおさんを偲んで — 「ひょうひょう」という救い

漫画家・東海林さだおさんの訃報に接し、心よりご冥福をお祈りいたします。

東海林さんは2026年4月5日にご逝去され、その旨が4月15日に報道されました。
数十年も前のことになりますが、私は東海林さんの文庫本をよく読んだ時期が
ありました。

そこに綴られていた、自分を客観的に眺めるような「ひょうひょうとした自虐」、
「愛すべきちょっと隠したい出来事」の描写は、今も記憶に残っています。

「あるある」がもたらす安心感

東海林さんの文章は、自分の失敗や格好悪さを隠すどころか、
それを面白おかしくさらけ出してくれます。

「人間なんて、案外こんなものだよな」と思わせてくれるその筆致です。
それはどこか心の支えになり、読むたびに「ニヤっと」一人笑いをさせられた
ものです。

印象に残っているエピソードを、記憶を頼りに書いてみました。記憶違いや表現
の誤りがありましたら、ご容赦ください。

なお、出典となる書名は手元では特定できておりません。

1. モテたい一心での「進路変更」

早稲田大学の受験時、当初は第一文学部の美術史科を受ける予定だった
東海林さん。しかし、ふと隣の窓口に「ロシア文学科」があるのを見つけ、
「女子学生と付き合うならこちらの方がモテるのではないか」という理由で、
急きょ列を並び替えて出願してしまったといいます。

さらに、「志望を変えて列を並びなおした自分を、窓口の人はどう見ていたの
だろうか」と、その瞬間の自分を客観的に観察して冷や汗をかく描写が印象的
でした。

人生の岐路ですらどこか他人事のように捉えながら、それでいて妙に繊細に
自分を見つめている–。

その視点こそが東海林さんの真骨頂だと感じます。

2.「格好つけ」の空回り

東海林さんは大学生の頃、駅で女子高生を見かけると、つい大人ぶってタバコの
フィルターを「トントン」と叩き、小粋に火をつけていた、という趣旨の
エピソードがありました。

ところが、ふと気づけば彼女たちはそんな動作など気にも留めず、いつの間にか
去っている。後に残るのは、本当は吸いたくもないタバコを手持ち無沙汰にふか
す自分だけ–。

この何とも言えない自意識過剰な滑稽さに、私は若い頃の自分を重ねて、
思わず苦笑いしてしまいます(笑)

3.「観察眼と愛」

他にも、漫画の持ち込み時の緊張感あふれる描写や、親友・福地泡介さんとの
ユーモアに満ちた手紙のやり取り、アパートでのストーブ火事の騒動など、
印象に残っているエピソードは数多くあります。

こうした数々の場面が今も鮮明に思い浮かぶのは、それだけ東海林さんの観察
眼が鋭く、表現が豊かだったからだと思います。

最後に

自分の失敗を隠さず、ひょうひょうと表現するその姿勢は、私に「完璧じゃなく
てもいいのだ」という安らぎや勇気を与えてくれました。

東海林さんが遺してくださった数々の「あるある」は、これからも私の心を
軽く、温かくしてくれることと思います。

心に残る作品の数々を、本当にありがとうございました。

2026.04.14

「令和の火の見櫓」が繋ぐ、見守りのバトン

かつて、日本のどの集落にも、空を突くようにそびえ立つ「火の見櫓(やぐら)」がありまし
た。

半鐘の音が響けば、誰もが空を見上げ、地域一丸となって危機に備える。それは単なる建造物
ではなく、その土地に暮らす人々の「安心の象徴」であり、「共助の精神」そのものでした。

しかし、時代の推移とともに消防設備が整い、いつしか火の見櫓は「その役割を終えた」とさ
れ、風景から消えつつあります。

 

忍び寄る「気づきの空白」


ところが今、地方公共団体や地域コミュニティを歩くと、新たな課題が浮き彫りになっていま
す。

それは、「通報の遅れ」です。

●空き家の増加:
以前なら隣家が気づいて声を上げた火種も、空き家が増えたことで「誰の目にも触れない空白
地帯」が生まれています。

●高齢化の進行:
異変に気づいても、通報というアクションに時間がかかったり、そもそもお爺さん、おばあさ
んの多い地域では五感の衰えから初動が遅れてしまうケースが増えています。

「人が見て、判断し、動く」という、かつての当たり前が、今、静かに崩れ始めているのです。

現代の「目」として、AIに魂を吹き込む


ここで私が提唱したいのが、「AIによる火の見櫓の再定義」です。

かつて櫓の上に立った見張り番が、鋭い眼光で煙を見極めたように、現代のAIもまた、同じよ
うに「見て、判断する」能力を手に入れました。

しかも、その「気づきの範囲」は、人間の限界を遥かに超え、24時間365日、広域を一度に俯
瞰することが可能です。

これは決して、冷たいデジタルへの置き換えではありません。

「古き良き見守り文化」を、AIという最新の道具を使って、令和の時代にアップデートする試
みなのです。

経世済民:インフラに「済(すくう)」力を持たせる


私の思いの根底にあるのは「経済」の語源になった「経世済民(けいせいさいみん)」の思想
です。

「経」とは、世の中を支えるインフラ(仕組み)を整えること。
「済」とは、苦しんでいる人を具体的な手段で救い、対岸へ渡らせること。
(橋を渡らせることから人を救う(済う)語源となった)

テクノロジーがただの「便利な道具(経)」で終わってはいけません。それが火災を未然に防
ぎ、お年寄りの命を救い、地域の安寧を守る「具体的な架け橋(済)」となって初めて、その
価値が完成します。

消えゆく火の見櫓を、最先端の「AI守護神」として復活させる。
それは、私たちが先人から受け継いだ「至誠(しせい)」の心を、次の世代へ繋ぐことでもあ
ると思うのです。

2026.04.07

凡人が非凡になるとき

今日は、経営の神様ドラッカーの名著『マネジメント』から、私が感銘を受けた言葉をシェア
したいと思います。

「組織の目的は、凡人をして非凡なことをなさしめることにある」

良い言葉ですよね。
天才アーティストや大谷翔平選手のような超一流のプロ野球選手は、個人の才能で世界を圧倒
します。

一方で、世の中のほとんど大多数は私のような「普通」の人間、つまり凡人です。

しかし、その凡人たちが集まってスクラムを組み、一人では到底できないような「非凡な成
果」を出す。それこそが組織の存在意義だとドラッカーは教えてくれているのだと思います。

そして今、私はこの言葉の意味が、これまで以上に深まっているように感じています。

AIという「最強の杖」を手に入れた凡人たち


なぜなら、私たち凡人の手元にAIという「最強の杖」を手に入れたからです。
これまでは「知らないことを調べる」だけで日が暮れていた私たちですが、AIを使いこなすこ
とで、これまでよりも速く、広く、深く考え、成果につなげられる場面が確実に増えてきまし
た。

つまり、普通の人でも、AIという魔法の杖を手にすることで、これまで一人では届かなかった
力を発揮できる。大げさに言えば、大魔神のような頼もしさを持てる時代になったのです。

なぜ、今の日本組織は「動けない」のか?


日本のDXやAI化が海外に比べて遅れているのは、人材がいないからではありません。
「使いこなすメカニズム」が錆びついているからだと思います。

最近の組織を見ていると、こんな声が聞こえてきそうです。

「AIなどをいれて失敗したらどう責任をとるんだ?」
「余計なことをして周りから叩かれたくない……」

非難を恐れるあまり、会議の回数が増え、資料も厚くなり、肝心の「決断」がどこかに置き去
りにされている。せっかく力のある人材がいても、その力を活かす仕組みが機能しなければ、
組織は前に進めません。私は、これも組織が停滞していく一因ではないかと思っています。

 

始めるリスク、始めないリスク


かつての日本は、凡人が組織力で世界を席巻する力を持っていました。
しかし今は、決断を先延ばしにする人が増えてしまった。

新しいことを始めるには、必ずリスクが伴います。
でも、「始めてみないと、何も始まらない」。

事業戦略をこねくり回して、覚悟を決めずに足踏みしている間に、世界はAIの杖を振ってどん
どん先に進んでいます。

「自分にしかできないこと」にAIを添えて


還暦を迎えた私も、かつては自分を「中途半端な選手」だと思ってきました。

でも、その中途半端な凡人が、積み上げた経験を背負い、AIという杖を手に「信じきって」
動くとき、そこには私にしかできない非凡な結果が待っていると確信しています。

「私だったら、これができる!」と手を挙げる勇気。
周りの目を気にせず、まず一歩を踏み出す覚悟。

凡人である私たちが、AIと共に「非凡な冒険」を始める。
そんなワクワクする新たな人生のステージを、皆さんと一緒に走っていきたい。
そう思っています。

2026.03.26

21世紀の夢がいよいよ現実に — ロボットとAIが拓く「五感」の未来—

先日、NVIDIAのジェン・スン・フアン氏が「この3年間でロボットは劇的な進化を遂げる」と
語っていました。私も全く同感です。

今、まさにロボットが社会へ本格的に実装される、歴史的な転換点に私たちは立っています。

「夢の21世紀」の正体


私たちが子供の頃に夢見た21世紀は、空飛ぶクルマが走り、月旅行が当たり前の世界でし
た。

実際の21世紀前半は、スマホの普及こそ目覚ましかったものの、どこか「泥臭い」現実の積
み重ねだったようにも感じます。

しかし、ChatGPTに代表されるAIの登場で流れは一気に加速しました。

AIの成長力は凄まじく、かつて夢見た「SFの世界」が、猛スピードで現実に近づいています。
そのうち、手塚治虫氏の漫画のように「ロボットに人権を」という議論が真剣になされる日
も、そう遠くないのかもしれません。

 

私が考える「ロボット」の定義


私は、ロボットは必ずしも「二足歩行」である必要はないと考えています。

私の定義するロボットとは、以下の要素を備えた存在です。

・駆動源(エンジン・動力)があること
・センサーや視覚で自分を制御できること
・AIでそれらを判別・判断できること

そう考えると、お掃除ロボットはもちろん、自動運転車も立派なロボットです。
さらには、「ビルそのもの」をロボット化(AI制御ビル)することも可能です。
カメラやセンサーで異常を検知し、エレベーターや空調を自律的にコントロールする。
建物自体が意思を持つロボットになるのです。

人間に近づく「五感」の画像解析


現在、人間は物事の判断の約80%を「視覚」に頼っていると言われています。
画像解析の分野において、コンテクスト(文脈)を含む複雑な認知は、まだ人間の方が一日の
長があります。

例えば、倒れている人を見つけたとき、人間はただ「見る」だけでなく、同時に「助けて!」
という声や悲鳴を「聞き」、周囲の異変を「感じ」て、総合的に「危険だ」と判断します。


これこそが、視覚・聴覚・触覚といった「五感」による危機察知能力です。

これからのアースアイズが目指すもの


これまでのAIは視覚(カメラ)が中心でしたが、これからは「声」や「音」、あるいはその他
の感覚を組み合わせた多角的なアプローチが必要です。

私たちは、単なるカメラの機能にとどまらず、あらゆる先端技術を組み合わせることで、人間
が五感で感じるような「直感的な危険察知」をシステムで実現したいと考えています。

誰もが安心して暮らせる「夢の21世紀」を、私たちの技術で守り抜く。
そんな未来を皆様と共に創っていければ幸いです。

2026年10月
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