サブロー通信

サブロー通信は、アースアイズ代表 山内三郎が配信するメルマガです。
本ページでは、2019年4月〜現在までのサブロー通信をご覧いただけます。

2020.02.18

『しもやけ』と『働き方改革』

私が子供の時に住んでいた神奈川県の相模原市は、神奈川県でも大都会のイメージの横浜や爽やかな海のイメージの湘南などからは程遠く『さがみっぱら』と呼ばれるような地域で、その名の通り『原っぱ』だらけのところでした。冬の朝には庭のバケツの水が必ず凍っており、地面には霜柱が立っていました。
子供だった当時はまったく気にしていませんでしたが、その頃小学生が履く靴などは、おそらくかなりの安物で、冬場に凍った水たまりなどをバシャバシャ走り周っていると靴下がすぐにビショビショになっていました。
『足が冷たいなぁ』と思いながらも、そのままほったらかしにしていると、足の小指が赤く芋虫のように腫れあがり、かゆくなりました。それを見た父親が『それはしもやけだな。寒くて血の巡りが悪いんだ』と言って、わたしのかゆくなった足先を石油ストーブの前で揉んでくれたのを覚えています。最近では『しもやけ』になったという話もあまり聞かないような気がします。地球温暖化の影響で、冬がそれほど寒くなくなってきているのかもしれません。
昔は寒さがしみる冬に身体を温かくするマフラーやセーター、手袋などは手編みすることが愛情表現の一つだったような気がします。厳しい寒さをしのぐ暖かい手編みの衣類を身につけると、子供心にも母の愛情を感じたものでした。小学生の頃、母が編んでくれた手袋をはめていた記憶があります。残念ながらすぐに指の先に穴があいてしまうのですが、気にしないでそのままはめていました。
いつの頃からか手袋やマフラーは買うものとなり、現在ではかなり安価でどこでも買えます。1シーズンで使い捨てになってしまう場合もあり、愛情の象徴とは言い難いものとなりました。心を伝える『もの』ではなく、単に安くて便利な『モノ』となってしまったように思います。
長年使われたものでも、愛情のこもった手作りのものではないためか、愛着という言葉はあまり馴染まない感じがします。
日本では八百万の神と言われ、生物はもちろん長く使ったものにも『魂』が宿ると言われてきました。ただ、私ですら、20年以上使ってきた眼鏡のフレームが壊れかけ、買い替えようと思っている私は眼鏡に魂が入っているようには感じていません(笑)
仕事の効率化を図ろうとする「働き方改革」という言葉をよく耳にするようになりました。最近では、ビジネスホテルなどに行くと大変勉強になるのですが、AIコンシェルジュとでも言えるような色々な工夫があり、部屋から何かを尋ねようとフロントに電話する前に、自分のスマホで色々と調べられ、わかるような工夫をされていることが多いです。
ビジネスにおいては積極的に効率化を進めるべきだと私も思いますが、ただ、人間関係においては、心を運ぶ、繋ぐ、伝える、『もの』や『サービス』があっても良いかなと思います。
日本は『おもてなしのサービス』は世界一のレベルであると思いますが、その基本となるちょっとした細やかな気遣いが、効率化の中で省かれていくことは少し残念だなと思います
効率化というと、何か『楽になる』ことを追求することのように思われがちですが、不要に見えるものを省き、時間を節約した結果、大切なものを失う場合もあるということに気が付いたときに、本当の『働き方改革』になると思っています
2020.02.07

サブロー通信:万引きは捕まえるな

万引きをさせずに予防するにはどうすればいいかを必死に考えた

 

弊社代表山内三郎の経験談

 

万引きという言葉にはマイナスのイメージしかありません

万引き犯を捕まえたとしても、犯罪行為をした当人も、被害を受けた店も、見張っている保安員も、暗く重く

やるせない思いが残るだけです。

 

私は保安員の経験があります。いわゆる「万引きGメン」です。

万引き犯の捕捉は原則、現行犯でなければいけません。万引きを目撃しても、万引き犯が商品を隠し持った

まま決済せずに店舗外へ出るまで、声をかけることができません。犯罪が成立してから、ということです。

いったん隠した商品を商品棚に戻さないか? 更にもう一品盗らないか? など店外に出るまで目が離せ

ません。何よりも、万引き犯かもしれないという不審な人物を探し回り、気づかれないように後をつけることに

疲弊します。

捕捉したら、逃げられないよう、あるいは暴行を受けないよう、細心の注意を払いながら事務室へ連れて行き、

面談をします。万引きした商品を全部出させたうえで事情や身元などの聞き取りをおこないます。

※取り調べそのものの行為は一般人にはできません。警察でおこないます

万引き犯として補足される人は、老若男女、十人十色、本当に様々です。そしてほとんどの人が「初めてです」と

言いますが、常習犯はその手慣れた行為から、捕捉した保安員には分かります。単独で自宅に帰すことは厳禁

で、保護者や家族を呼んだり、警察を呼んだりします。場合によっては、出入り禁止にすることもあります。

捕捉後、数時間かかる作業です。

 

日々そのようなことを続ける中で、どう対応することが本当に正しいのか当時の私には分からなくなっていま

した。

ここ10年くらいの傾向ですが、お年寄りの万引き犯が増えています。食の細い老人が食べる量は、たかが

知れていますので、おにぎり1個や菓子パン1つを万引きしたりします。それを捕捉するのはこちらも心が痛い

のです。

 

保安員を始めた頃の私は怪しい人物を見つけたら、「万引きしないかな」「早くやらないかな」「捕まえて手柄を

立てたいな」などと思って監視をしていました。しかし、万引き犯を何度も捕捉するにつれ、そういう浅ましい

考えは無くなっていきました。実際は万引き犯を捕まえても後味が悪く、やるせない気持ちになるだけだったから

です。

 

そんなある日、怪しげな人物を見張っていた私は自分の心の声にふと気づき、驚きました。不審な人物を注視

しながらも「やめろ、やめろ」「やるなよ」「ちゃんと買ってくれよ」と心の中でつぶやいていたのです。

ある時には、立場上本来はいけないのですが、万引きしそうな気配が感じられた小学生くらいの子供に歩み

寄って話しかけ、違法な行為をしないよう促しました。

そしてだんだん「万引きをさせないためにはどうしたらいいのか」と考えるようになっていったのでした。

 

万引きは捕まえてからの対応自体が時間と労力の無駄なコストであるというだけで

なく、捕まえる側の心理的ストレスも大きいのです。

 

私はふと、「自分のやっていることを続けると万引きが減るのではないか?」と思いました。

つまり、お声掛けです。万引きしそうな不審者に、「いらっしゃいませ」と声をかけるのです。

周りから見ると変なおじさんのようですし、万引きを捕まえないのですから、保安員としての私の実績もがた

落ちでしたが、仕事をしていないように思われるのは本意ではないので、警備日報には「今日はお声掛けを

5件おこない、万引きを防いだと思う」と記録を残すようにしました。

それを1か月ほど続けると、私がお声掛けをした数は数百件に上り、その後も地道に続けていました。

 

ある日、店長に呼ばれました。万引き捕捉の実績がない私は「解雇されるのかな?」と思っていましたが、店長

は棚卸の商品ロスのデータ表を見せながら尋ねてきました

「棚卸の結果、商品ロスが劇的に下がっている。何かこころあたりあるかい?」と。

店長は、私が万引きの常習犯を何人も捕まえたのではないかと思ったのかもしれません。私は警備日報を

見せて、万引き犯を捕捉するのではなく、不審な行動をしている人物にお声掛けを続けていたことを説明しま

した。

怪訝そうに聞いている店長に私は我慢強く説明を続けました。声掛けをしたリストを見せながら、「この女性は

大きなカバンを持ってうろうろしていた」とか、「この男性は商品をもって防犯カメラの死角の位置でキョロキョロ

していた」などと、具体的な状況をイメージできるように身振り手振りで説明しました

私にいくつか質問をしながら話を聞いていた店長は、だんだん、私のしてきた行動が肚に落ちてきたようで、

一通りの説明を聞き終えた後、「そうか!不審者に声をかけてくれたのだね!声をかけられた不審者は万引き

できるはずがない。それを一日に何人もしてくれていたのか? 1日5人、30日で150人、半年続ければ900

人。それならロスが下がるのは当たり前だ。それはすごいね。捕捉するよりはるかに効率的だ。」

と話し、表情が明るくなりました。私の行動を私よりも深く理解してくれました。

そして、それに続けて言われた店長の言葉が私に刺さりました

「お声掛けか。サービスの質の向上がそのまま防犯にも役立つのだね。」

 

不審者に声をかければ、それだけで万引きを抑止することができるのです

 

 

万引きを防ぐ魔法の言葉『いらっしゃいませ』

サービスの向上がそのまま防犯に役立つのです

 

AIガードマンは、不審な行動をしている人にお声掛けをすることで、万引きを防ぐツールです。

最も多く行われている犯罪行為の一つである万引きを未然に防ぎ、犯罪を生まない売り場が増えることは、

私たち一人一人の身近な生活の「安心・安全」にもつながる、非常に大切で意義のあることだと考えています。

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