サブロー通信

サブロー通信は、アースアイズ代表 山内三郎が配信するメルマガです。
本ページでは、2019年4月〜現在までのサブロー通信をご覧いただけます。

2022.05.17

心のふるさと

30年ほど前、都の西北 甲州街道沿いの西早稲田に「ふるさと」というカウンターだけの小さな一杯飲み屋がありました。
新宿のゴールデン街のような一杯横丁的な古びた木造建築が建ち並ぶ場所に「ふるさと」はあり、もちろん、出入り口はガラガラと、引き戸を開けて敷居をまたいで入ります。

現在は、東伏見に移転した野球部の「安部球場」や寮も、
私が大学2年生の時までは早稲田大学の校内やその周辺にあり、
私たち野球部員たちの生活の基盤は専ら西早稲田でした。

さて、「ふるさと」のカウンターは、「コ」の字にもならず、縦7席、横3席程度。

古びて色褪せた木の壁には所狭しと
歴代の応援部、野球部、バレー部、、、などの
体育会系卒業生の色紙や写真などが貼り付けられていました。
当時、プロ野球選手として、現役バリバリで阪神で活躍されていた
岡田さんの写真や応援部の色紙には、「酒の一滴、血の一滴」などの言葉が寄せられており、
バブル期の時代でもバンカラな早稲田がそこには残っていました。

1、2年生の時の私は、上級生の遊び道具要員だったので、
「ふるさと」に行く(拉致のように連れていかれる)のは苦痛で苦痛で仕方なかったのですが、
3年生程度から、少し落ち着いて自分の意志で行くようになりました。

練習が休みになる前日は、決まって「ふるさと」に集合して、
それから新宿の繁華街に遊びに行くのが野球部の常だったように思います。

なぜ、そうまでして、「ふるさと」にいくのかというと、
もちろん、学生が安く酒を飲めるのもありましたが、
それよりも、水戸弁のおやじさん(小川さん)がカウンターにいたからだと思います。
当時の体育会系は、馬鹿みたいに走らされたり、理不尽に殴られたり、
無駄に先輩の面倒を見なければならないことがたくさんあり、
そのようなことを酒の肴に「ふるさと」で飲んでいました。
「ふるさと」は、現役の選手達が、外では言えないことも言える場所で、
代々の先輩たちもそうして、酒を飲んできていました。

小汚い酒場で、学生が馬鹿みたいにデカい声で笑ったり、
熱っぽく話したり、楽しい時間でした。
飲んで、笑って、泣いて、楽しむ姿を小川さんは良く見守ってくれました。
小川さんは水戸弁で
「サブちゃん、そ~よ~。」
「そりゃ~違うよ~」
と相槌をしてくれました。
今思えば、大したことはない何気ないやり取りでしたが、
当時はそのやり取りにホッとさせられていました。
 
個人的な考えですが、日本人が指すふるさとという言葉には、
自分が生まれた場所という意味だけではなく、
自分の心の成長をさせる場所という意味もあるように思います。
学生時代の私にとって西早稲田の「ふるさと」で過ごした時間は、
心の成長に必要なかけがえのない時間であり、
まさに「こころのふるさと」でした。

そんな「ふるさと」を卒業してから10年ほどたったころ、
小川さんが癌で入院されたとの連絡が入りました。
野球部OBの先輩が、中心になり、入院費をカンパしたり
できる限りのことをさせていただきましたが
その後、他界されてしまいました。

小川さんのお通夜は、飲み屋のおやじのそれとは思えないほどの長い参列でした。
ふるさとを卒業した人達、誰もが小川さんに感謝を伝えに行きました。

2022.05.10

理念ってなーに?

会社を作って、10年ほど経った頃だったと記憶しているので、30代後半の時の話です。

私が県の補助金申請をした際に、指導役として中小企業診断士の「コンサルタント」なる方が、

当時の会社にお越しくださいました。

いろいろと御指南いただいた後、その方から、「御社の企業理念は何ですか?」と質問されました。

実は、当時の私は理念を見つけられずにいました。(そして、そのまま20年ほど見つけられないままでしたが(笑))

自分は会社とほぼ一心同体だと思っていたので、会社の理念と言われても

「私自身の存在意義は?」「なぜ生まれ、なぜ生きている?」と聞かれているようなものでした。

そんなことを30代の私が答えられるはずもなく、私はこのコンサルタントの質問に質問で返しました。

「理念とは何ですか?」と。

そのコンサルタントの回答を、私は憶えていません。

残念ながら、私が欲した核心を突くような回答ではありませんでした。

それをきっかけに、「企業理念とは何か」の答えを求めて

様々な本を手当たり次第に読み漁りましたが、なかなか気持ちにヒットするものがありませんでした。

私にとって、どうしてもしっくり受け入れられなかったのは、

利潤と社会貢献という相反する概念でした。

それをいかに矛盾なく受け入れることができるか、葛藤のようなものがありました。

そんな中、やっと日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一の

「論語と算盤」という本に巡り合いました。

経営者に話しかけるような表現で、正義を持って進める事業家と

守銭奴の違いや企業の目標と個人の目標を合致させる指標について説いていました。

まさに多くの大企業の礎を築いた渋沢栄一がいたからこそ、今日の日本があると感じます。

また、欲求五段階説で有名なアブラハムマズローの「完全なる経営」も腑に落ちた1冊です。

人は本質的に、他人や社会に貢献し

それにより自分の尊厳を保ちたいという欲求をもっているとしています。

その欲求は「全ての人」にあり。その素晴らしい部分を高めることで、

組織や事業の貢献性に繋がると説いています。

人をコントロールする組織論ではなく、個人の心の動きを中心として企業ビジョン作り上げる考え方を

1960年代に描いていることは先進すぎると思える内容です。

21世紀も20年余りが過ぎましたが、これからは心の時代になってほしいと思っています。

物質主義のような他人よりも多くの物を所有していることを自慢するのではなく

心の豊かさを競い合う時代にしてほしいです。

心の豊かさとは、共に分かち合うことを競うように行うことです。

私は、AIを活用して自分だけでなく多くの人の心を豊かにしたいです。

例えば、AIが「お声掛けのタイミング」をお知らせすることで「犯罪を未然に防ぐ」ことができたり、

お互いが「挨拶」を交わすようになれたりしたら

心の豊かさがもっと拡がる気がします。

いつ起こるか判らない事故、高齢者徘徊、迷子、火災や万引などの犯罪を

AIカメラにより24時間365日見守ることで、不安を取り除き

安全な社会に貢献できるのであれば、世界に幸せの輪が拡がると思うのです。

心豊かにすることに理屈はいらないでしょう。

現在の私にとって理念とは、理屈で考えることでは無く

理屈なく心が躍ることを組織として掲げることだと感じています。

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