失敗をすると二度、良いことしなければならない 失敗したら倍返し
私が高校三年生の時、神奈川県の春季高校野球の大会でベスト8を争う試合だったと思います。
横浜の保土ヶ谷の球場で、対戦相手は武相高校という神奈川の野球の名門高校でした。
あれは確か延長戦に入って武相高校の攻撃の時でした。
1点が勝敗を決める場面で、私は守備固めでライトのポジションに入りました。
味方の投手にも疲れが見え始め
少しずつ、相手のバッターもバットの芯で投手のボールを捕らえ始めていました。
1アウトの時、私が守るライトに浅いフライが上がりました。
それほど、難しいフライではなく、前進すれば普通に捕れる小フライです。
私は前進していきましたが、その時、太陽が目に入りました。
完全にボールを見失いました。
まったくボールが見えないのですが、
私は、「なんとしてもボールを捕ろう」とする必死の姿勢を見せませんでした。
本来であれば、必死に何か工夫をすべきだったのですが
その時はそれができず、冷静にボールを見送ってしまったのです。
ボールはぽとりと私の前に落ちました。
当然、チームの仲間も観客も、私がなぜ、ボールを触りもせず
目の前に落としたのかを理解できず、不穏な雰囲気が広がりました。
私もどうしよう?という気持ちに一瞬なりましたが、
なぜかその時は、すぐに「自分のせいではない。太陽のせいだ。集中しろ」と
必死に自分に言い聞かせました。
その時は、それが良かったのだと思います。
自分に言い聞かせることで、試合に集中できました。
打者走者は、2塁に達しています
「延長戦の1アウト、ランナー2塁。ヒットが出れば、
必ずランナーはホームを狙ってくる。
必ず、ホームで刺さなければならない。」
私は守備を2歩ほど前におきました。
すると、芯に当てたライナーが再び私の守るライトに飛んできました。
私は、躊躇なく走り出しました。ライトのライン際に一直線に走ります。
打球はライナーではありましたが、難しい打球ではなく
地面ギリギリでランニングキャッチできました。
その時、「セカンド!」
と大きな声が聞こえました。
セカンドベースを見るといち早くホームに戻りたい二塁ランナーが
ヒットであると思い、飛び出していたのです。
ランナーは、戻りだしており二塁ベースから4、5メートルほどの距離です。
私はバッティングセンスがまったく無いのですが、守備においては
打球へのカンや、送球には自信がありました。
一瞬でも、投げる場所が決まれば、自信をもってそこに投げられます。
ライン際でセカンドに対して後ろ向きになっていた身体を反転させ、
ボールを握りしめると、
全身の力を120%ボールに乗せてセカンドへ投げ込みました。
セカンドベースのカバーに入っていたショートの選手は、
あたかも一塁手のように私の送球の方向にグローブを伸ばし
少しでも早くボールを掴もうとしています。
私の送球したボールは吸い込まれるように彼のグローブに入ったことを覚えています。
ランナーはセカンドベースに足から必死に滑り込んでいます。
セカンド塁審の手が上がり、アウトの宣告をしました。
間一髪、ほんの10センチほどの差でした。
アウトにできて良かったと思う一方で、さっきまでランナーが出たのは、
「自分のせいではない」と思っていたにも関わらず、
アウトにできたことよりも、ランナーを出してしまったことに
恥ずかしさが込み上げてきました。
野球のようなチームスポーツにおいて、
自分の失敗を自分でリカバーできることは少なく、恵まれたプレーでした。
1イニング中に、外野に連続でボールが飛んでくることは稀なことです。
ミスをすれば、とにかく一つ良いことをしても、まだ、ミスは払拭されません。
二つ良いことをしてやっと、元に戻るだけです。
私が良い送球でセカンドランナーをアウトにできたとしても、
それは、ただ元に戻しただけに過ぎません。
失敗したら倍返し
私の仕事は、倍返しがたくさんあります(笑)