万引きは捕まえるな
万引きをどうしたらさせずに予防できるかを必死に考えた
弊社代表山内三郎の経験談
万引きという言葉にはマイナスのイメージしかありません。
万引き犯を捕まえたとしても、犯罪行為をした当人も、被害を受けた店も、見張っている保安員も、暗く重くやるせない思いが残るだけです。
”万引きGメン”の経験
私は保安員の経験があります。いわゆる「万引きGメン」です。
万引き犯の捕捉は原則、現行犯でなければいけません。捕まえるにはいろいろ留意事項がありますが、万引きを目撃しても、万引き犯が商品を隠し持ったまま決済せずに店舗外へ出るまで、声をかけることができません。犯罪が成立してから、ということです。
いったん隠した商品を商品棚に戻さないか? 更にもう一品盗らないか? など店外に出るまで目が離せません。何よりも万引き犯かもしれないという不審な人物を探し回り、気づかれないように後をつけることに疲弊します。
捕捉、事情聴取、身元確認、警察や家族に連絡・・・
捕捉したら、逃げられないよう、あるいは暴行を受けないよう、細心の注意を払いながら事務室へ連れて行き、面談をします。万引き行為の商品を全部出させたうえで、事情を聴き、身元確認など、警察の取り調べのようなことをします。
(※取り調べのそのもの行為は、一般人はできません。警察でおこないます)
対応は、老若男女、十人十色、本当に様々です。そしてほとんどの人が「初めてです」と言いますが、その手慣れた行為から常習犯であることは捕捉した保安員なら分かります。単独で自宅に帰すことは厳禁で、保護者や家族を呼んだり、警察を呼んだりします。場合によっては、出入り禁止にしたりすることもあります。捕捉後も数時間かかる作業です。繰り返しの嘘を聞くことも時間を拘束されることも保安員にも店員にも苦痛となります。
「捕まえて手柄を立てたい」から「やめろ、やるなよ」に
そのようなことを続ける日常の中で、どう対応することが本当に正しいのか当時の私には分からなくなっていました。
ここ10年くらいの傾向ですが、お年寄りの万引き犯が増えています。食の細い老人が食べる量は、たかが知れているのですが、おにぎり1個や菓子パン1つを万引きしたりします。それを捕捉するのはこちらも心が痛いのです。
保安員を始めた頃の私は怪しい人物を見つけたら、「万引きしないかな」「早くやらないかな」「捕まえて手柄を立てたい」などと思って店舗の巡回監視をしていました。しかし、万引き犯を何人も、何度も捕捉するにつれ、そういう浅ましい考えは無くなっていきました。万引き犯を捕まえても実際は後味が悪く、やるせない気持ちになるだけだったからです。
そんなある日、怪しげな人物を見張っていた私はふと気づき、驚きました。不審な人物を注視しながらも「やめろ、やめろ」「やるなよ」「ちゃんと買ってくれよ」と心の中でつぶやいていたのです。
万引きをさせないためにはどうしたらいいか
立場上、本来はいけないのですが、小学生くらいの子供から万引きしそうな気配が感じられた時には歩み寄って話しかけ、違法な行為をしないよう促していました。
そしてだんだん「万引きをさせないためにはどうしたらいいのか」と、考えるようになったのでした。
万引きは捕まえてからの対応自体が時間と労力の無駄なだけでなく、
捕まえる側の心理的ストレスも大きいのです
私はふと、「自分のやっていることを続けると万引きが減るのではないか?」と思いました。
つまり、お声掛けです。万引きしそうな不審者に、「いらっしゃいませ」と声をかけるのです。
周りから見ると変なおじさんのようですし、万引きを捕まえないのですから、保安員としての私の実績も、がた落ちです。仕事をしていないように思われるのは本意ではないので、警備日報には「今日はお声掛けを5件して、万引きを防いだと思う」と記録を残すようにしました。
それを1か月ほど続けると、私はお声掛けの件数は数百件に上りました。それを地道に続けていました。
解雇されるのか!?
ある日、店長に呼ばれました。万引き捕捉の実績がない私は「解雇されるのかな?」と思っていましたが、店長は棚卸の商品ロスのデータ表を見せながら尋ねてきました
「棚卸の結果、商品ロスが劇的に下がっている。何かこころあたりあるかい?」と。
店長は、私が万引きの常習犯を何人も捕まえたのではないかと思ったのかもしれません。私は警備日報を見せて、万引き犯を捕捉するのではなく、不審行動をしている人物にお声掛けを続けていたことを説明しました。
怪訝そうに聞いている店長に私は、我慢強く説明を続けました。声掛けしたリストを見せながら、そのイメージが伝わるように、「この女性は大きなカバンを持ってうろうろしていた」とか、「この男性は商品をもって防犯カメラの死角の位置でキョロキョロしていた」などと、具体的に状況を目に見えるように手ぶり身振りで説明しました。
そうか、それならロスが下がるのは当たり前だ!
幾つかの疑問を私に質問をしながら会話をした店長は、だんだん、私のしている行動が肚に落ちてきているようで、一通りの説明を聞き終えた後、
「そうか!万引き犯に声をかけてくれたのだね! 万引き犯に声をかければ、万引きができるはずがない。それを一日に何人もしてくれていたのか? 1日5人、30日で150人。半年続ければ、900人 それならロスが下がるのは当たり前だ。それはすごいね。捕捉するよりはるかに効率的だ。」
と話し、表情が明るくなりました。私の行動を私よりも深く理解してくれました。
そして、続けて言った店長の言葉は私の心に刺さりました
「お声かけか!サービスの質の向上がそのまま防犯に役立つのだね!」
不審者に声をかければ、それだけで万引きや事故を未然に抑止することができるのです。
万引きを防ぐ魔法の言葉
『いらっしゃいませ』
サービスの向上がそのまま防犯に役立つのです
AIガードマンは、不審行動をしている人物にお声掛けをして、万引きを防ぐツールです。
万引きは、最も多く行われている犯罪行為の一つです。
犯罪を生まない売り場が増えることは、私たち一人一人の身近な生活の「安心・安全」にもつながる、非常に大切なことだと考えています。